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「歴史研究と図像資料のデジタル化」(ワークショップ報告・神奈川大学21世紀COEプログラム『非文字資料研究』NO8、2005年)
【部分】
神奈川大学21世紀COEプログラム「人類文化研究のための非文字資料の体系化」の研究テーマの一つに
「文化情報発信の新しい技術の開発」という項目がある。その具体的な内容は、非文字資料の体系化と情報の発信、
そして、技術の開発をめぐる非文字資料のデータ・ベース化とデジタル化を検討し、新たな方法論を提示することであり、
その理論枠を検討するために2005年4月28日「歴史研究における図像資料のデジタル化」をテーマにした
ワークショップが開かれた(http://www.kanagawa-u.ac.jp/06/kouenkai/050414/index.html)。
今回はとくにアジア(東南アジア、中国、日本)と関連の深い分野で歴史資料のデジタル化に関わってきた
専門家(柴山守氏・京都大学東南アジア研究所、小野博氏・コンテンツ株式会社、貴志俊彦氏・島根県立大学)に
報告をお願いし、今後の神奈川大学COEプログラムのための活発な意見交換を行なうことができた。
以下、そのワークショップの報告をまとめるながら、歴史研究と非文字資料に関連する最新の情報などについて触れておきたい。
「米国人宣教師と日中戦争、上海の敵国人集団生活所」(神奈川大学『人文学研究所報』、2005年)
【要約】
2004年7月、日本学術振興会科学研究補助金「不平等条約体制下、東アジアにおける
外国人の法的地位に関する事例研究」(基盤研究A/一般、代表:貴志俊彦・島根県
立大学)の支援によって米国のオレゴン州立大学のナイトライブラリ(Knight Library)が所
蔵する宣教師関連のスペシャル・コレクションを調査する機会を得た。
東西文化の衝突と融合を考える時に欧米の宣教師らがアジア各地で行なった宣教活動
に伴う膨大な記録が極めて重要であることはいうまでもない。たとえば、ロンドン大学の東
洋アフリカ研究所(School of Oriental and African Studies)が所蔵するモリソン・コレク
ションは1807年から1824年まで広東とマカオを中心に活動したロバート・モリソン(馬礼遜)
が収集した中国関係の蔵書として有名で、ハーバード大学イェンチン図書館(Harvard−Ye
nching Library)にも19世紀の中国を舞台に活動した米国人プロテスタントの宣教活動に
関する貴重な記録が数多く所蔵されている。ところが、中国における宣教師や教会の活動に
注目する動きは欧米からの観点に即したものだけではなく、最近は、中国でも上海市档案
館編『中国教会文献目録』が出版され、欧米人の宣教活動の中心の一つであった上海で
収集されたプロテスタントとカソリック関連の各種出版物、雑誌、個人記録など約3800冊の
資料が紹介されている。本稿が取り上げるオレゴン州立大学の宣教師関連コレクションも、
かれらが中国、日本、朝鮮半島、インドなどのアジア各地で宣教活動を展開するなかで見
聞した社会、政治、文化事項に関して言及した往復書簡や新聞記事、日記、レポート、
手書き記録、写真などを集めたものである。ところが、筆者がこの宣教師関連スペシャル・コ
レクションに注目した理由は同コレクションの中に日中戦争勃発直後の上海の様子や
太平洋戦争の後に日本によって運営された「敵国人集団生活所」について記述したオ
リバー文書の存在を確認したことによる。
日本は、1941年の真珠湾攻撃による太平洋戦争の勃発後、中国各地の日本軍占領地域
で主に英国人と米国人を対象とする敵国人集団生活所を運営していた。日本の外務省
外交史料館が所蔵する敵国人集団生活所に関する記録「大東亜戦争関係一件・在満支
敵国人関係」によれば、上海の敵国人集団生活所は1943年から設置が始まり、上海だ
けでも7000名以上が同集団生活所に収容されていたという。
ところが、これら日本側の記録が敵国人集団生活所を運営した行政側の資料であると
すれば、今回、筆者が閲覧したオリバー文書は同集団生活所で生活した収容者側の生
の声による資料であるといえる。この二つの資料を相互比較すれば、交戦状態に入っ
た日・米両国がどのような法律、または、命令に依拠し、中国で集団生活所を設置
し、外国人の法的地位を規制・統制したのか、その概略をつかむことができよう。
そこで、今回、オレゴン州立大学のスペシャル・コレクションの目録を公開するとと
もに筆者が閲覧できたオリバー文書の一部について簡単な資料の紹介を試みたい。以
下、オレゴン州立大学所蔵の資料の利用についてはChecklist of Missionary
Collection Special Collections, Knight Library, University of Oregon,
Eugene, Oregonを参照されたい。
「声音の歴史研究−日本所蔵の中国ラジオ放送関連資料について」(神奈川大学『人文研究』、2005年)
【要約】
20世紀初め、歴史の舞台に登場したラジオという新しいメディア媒体は東アジア地域に急速に広がり、
人々の生活のあらゆる分野にわたり大きな影響を及ぼした。従来の印刷に代表されるメディア媒体が
全ての情報伝達を視覚に訴えたもので、情報の生産と消費はごく制限された範囲で複製されているのとは異なり、
ラジオ放送は「電波」を経由して、時間と空間を超越した範囲で情報を複製、拡大して行ったのである。
ところが20世紀前半の東アジアにおけるラジオ放送の研究は、まだ十分な研究成果が得られず、
その概略が知られるだけである。このようなラジオ放送に関する研究を促進させるために
筆者を含めた何人かの研究者が集まり、2001年から東アジアにおけるラジオ放送史の構築のための
共同研究が始まっている。しかし、中国にはこのような日本側の無線広播に関連する研究状況や
ラジオ関連資料の所蔵状況などがまだ充分には知られていない。
そこで、今回は、日本側の郵政研究所付属資料館と外務省外交資料館が所蔵する
中国のラジオ放送関連資料の一部を紹介しながら、中国の関連研究者とラジオ放送に関連する
研究情報と意見交換を図りたい。
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